報告書等

周産期医療の広場

2015/04/10

【平成26年度厚労科研特別研究】「持続可能な周産期医療体制の構築のための研究」報告書⑧

【概要】
平成26年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
「持続可能な周産期医療体制の構築のための研究」
分担研究報告書

「ドクターカーを駆使した地域周産期医療体制の構築に関する研究」

研究分担者 中村 友彦 長野県立こども病院総合周産期母子医療センター長

研究要旨
2012年における新生児救急搬送についての日本全国アンケート調査を行った。対象は新生児医療連絡会(Japanese Neonatologist association)に登録されている日本国内の総合・地域周産期母子医療センター。回答率は全周産期母子医療センターで62.3%(246/395施設)、総合周産期母子医療センターのみで87.5%(84/96施設)で、日本のNICU病床数の約72.8%のカバー調査率であった。調査対象施設の2012年の年間NICU入院総数は55,331名(院外出生11,318名)で、日本の病的新生児の救急搬送数は年間約15,000人と推測された。
 搬送の詳細が調査できた病的新生児の救急搬送受け入れまたは三角搬送総件数は8,016件/年(0−331件/施設、夜間搬送は約32%)で、その内の約40%の搬送は新生児治療に特別に対応していない地方自治体(消防署)管理の消防救急車にて搬送されていた。病態安定期の後送搬送(back transfer)総数は1,775件/年(0−145件/施設)であった。52%の施設が新生児搬送に関するコーディネーターが同じ県内に不在で、47%の施設で新生児救急搬送システムが県内全域をカバーしていないと回答した。
 総合周産期母子医療センターの41施設(約49%)が新生児対応の救急車(specialized ambulance for neonatal transfer)を保有していた。装備内容は閉鎖循環式保育器(93%)、簡易型保育器(約80%)、呼吸・心拍モニター(約92%)、SpO2モニター(100%)、酸素空気ブレンダー(約75%)、新生児対応人工呼吸器(622%)、NO吸入機器(約4%)、搬送される新生児用のシートベルト(約49%)であった。新生児対応の救急車を保有していない施設のうち21施設(約49%)がその必要性を感じ、そのうちの15施設が予算の関係で購入できない現状であった。新生時対応の救急による新生児救急搬送1件あたりの必要経費は約130,000円であった。安全に新生児を搬送するシステムの充実が必要である。
日本における病的新生児の救急搬送システムの構築はいまだ不十分といえる。新生児対応救急車等の配備だけではなく、新生児搬送に関するコーディネーター等のシステム整備と、新生児搬送診療報酬の再考も必要である。



2-5 ドクターカーを駆使した地域周産期医療体制の構築に関する研究.pdf

参照サイト

なし

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