報告書等

周産期医療の広場

2015/04/10

【平成26年度厚労科研特別研究】「持続可能な周産期医療体制の構築のための研究」報告書⑦

【概要】
平成26年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
「持続可能な周産期医療体制の構築のための研究」
分担研究報告書
「新生児医療の人的供給体制の脆弱性」

研究分担者 楠田 聡 東京女子医科大学母子総合医療センター教授
研究分担者 田村正徳 埼玉医科大学総合医療センター教授
研究分担者 中村友彦 長野県立こども医療センター副院長

研究要旨
<目的>持続可能な周産期医療体制の構築のためには、医療施設の整備および勤務するスタッフの確保が重要である。そこで、新生児医療を担当する新生児科医の供給体制を解析するために、日本未熟児新生児学会の会員を新生児科医と定義し、その人数および平均年齢を検討した。
<研究方法>平成26年12月現在で、日本未熟児新生児学会の医師会員で年齢データが登録されている、2,707名を分析対象とした。また、平成26年末現在の年齢を新生児科医の現在の年齢とした。
<結果>
1.全国のNICU病床数は、平成25年には、出生1万人当たりでも約28床と増加したが、新生児科医1名当たりのNICU病床数は、平成14年の0.75床/会員から平成25年の0.89床/会員へ増加していた。
2.新生児科医の年齢分布は、全体で42歳、男性44歳、女性38歳であった。さらに、男性新生児科医の年齢の90パーセンタイル値は61歳、女性新生児科医の90パーセンタイル値は48歳であった。今後は、早期離職する女性新生児科医への支援が必要と考えられる。
3.都道府県別の新生児科医数は、出生1,000名当たりの新生児科医数で比較すると、平均は2.6名/出生1,000であったが、最大と最小では約4倍の開きがあった。
4.都道府県別の新生児科医の平均年齢は、約8歳の差が認められた。
5.各都道府県別の新生児医療を担う医師の供給体制は、新生児科医の数と年齢に依存するので、両者の組み合わせにより、その都道府県の新生児医療供給体制の将来充足度を1~5段階に分類した。その結果、東京以北に将来充足度が低い県が集中している傾向があった。なお、この将来充足度の低い地域で新生児死亡率が高い場合があったが新生児死亡率との関連はなかった。
<考察>新生児医療を現場で担う新生児科医は、全国的にNICUの病床数の増加にマッチしていない。また、現在勤務している新生児科医数とその年齢を考えると、将来的に新生児専門医による医療が提供できず、充足度が低下する地域が多く存在する。
<結論>新生児医療の人的供給体制は脆弱な状態で、今後の重点的な対策無しでは、わが国の新生児医療は継続できないと考えられた。

2-4 新生児医療の人的供給体制の脆弱性.pdf

参照サイト

なし

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