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2016/12/10

【日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会】「産婦人科医の確保に向けた地域枠学生の卒後臨床研修に対する提言」

【概要】
平成28年12月10日
「産婦人科医の確保に向けた地域枠学生の卒後臨床研修に対する提言」
公益社団法人日本産科婦人科学会
理事長 藤井 知行
公益社団法人日本産婦人科医会
会長 木下 勝之

都道府県は産婦人科医師の不足による地域産婦人科医療の危機的状況を打開するため、以下の施策を推進すること。
1. 地域枠の医学生が卒後初期臨床研修を行う場合、産婦人科を必修科とする。
2. へき地医療等への従事を義務とした地域枠の医学生についても、産婦人科専攻の選択を可能とする。

地域医療を担う医師の確保は、重大な政策課題となっており、医師の地域偏在、診療科間偏在を打開するための施策の一つとして、全国の医学部では地域枠が設けられています。地域枠には様々な制度がありますが、その全体としての募集人数は年々増加しており、医学部定員の15%以上を占めるに至っています。今後地域医療提供体制の確保に大きな役割を果たすことが期待されるわけですが、産婦人科、小児科等の医師不足の診療科の医師確保にもこの制度が有効に機能することが望まれます。しかし、各地域におけるその実情については、地域枠の制度やその運用が都道府県ごとに異なっていること、この制度による卒業生で、診療現場に出ている人数が少ないこと等のため、情報が限られており、十分明らかになっているとは言えないのが実情です。そこで日本産科婦人科学会医療改革委員会では、各大学医学部を対象としてそれぞれの地域枠制度と産婦人科医確保との関係について調査を行いました。その結
果、いくつかの県・大学では、地域枠制度を活用して将来の産婦人科医確保のための施策が始まっていることがわかりました。しかし、その数はきわめて限定的であり、特に産婦人科専攻医が人口比で少ない地域においては、より積極的な制度運用が必要と考えられました。
 
 この提言は以上のような検討を経て、地域枠制度を運用している都道府県に対して行うものです。今後、地域枠の卒業生は急速に増加していきます。迅速なご検討と施策の実行をお願いいたします。

 第一に、産婦人科は初期臨床研修の中では選択必修の診療科となっていますが、地域枠の研修医については必修科として必ず選択するように誘導していただきたいと考えます。その理由は、地域枠学生には将来の産婦人科専攻を検討するための機会を提供する必要があると考えるからです。地域枠学生の将来の進路としては、全体としてはへき地医療、在宅医療、総合診療等の占める割合が高くなると考えられ、そのための教育研修の機会を提供する必要がありますが、同時にそれぞれの地域の実情に応じて、不足している診療分野を専攻する途も示していく必要があります。初期臨床研修の段階で産婦人科を経験することで、研修医は自分の産婦人科専攻に関する適性を判断する機会を持つことができます。将来産婦人科を専攻しない場合でも、産婦人科という診療領域はプライマリケア診療に従事する上で研修が必要な領域であり、初期臨床研修の段階で研修しておくことは本人にとって有益な経験となります。
 第二に、地域枠制度では、義務年限において勤務地として特定の医療機関が指定されることが多いのですが、指定医療機関では産婦人科専門医研修が困難で、実質的に産婦人科専攻が難しくなっている現
状があります。産婦人科医が不足している地域では、地域枠の専攻医が、県内の分娩を取り扱う医療機関で産婦人科医師として勤務する場合には償還期間として算定できるようにしていただく等の対策を講じて、産婦人科を専攻する上での制度的なハードルを取り除いていただきたいと考えます。具体的方策につきましては、既にいくつかの県で参考となる先行事例があること【(参考)1.参照】を申し添えます。

以上

2016-12-10付 地域枠学生の卒後研修に対する提言.pdf

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